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青いバラ

by member last modified 2007-08-15 12:02

Blue Rose

800年以上にわたる品種改良の歴史をもち、花の女王とも呼ばれるバラは、園芸種が二千以上も開発されています。しかし、英語で"blue rose"という言葉が「かなわぬ望み」を意味するように、今日まで青いバラは存在しませんでした。


アントシアニンが花の色を決める

花の色あいは細胞内の液胞という部分に蓄えられる色素の種類と量によって決まります。ほとんどの花の色はフラボノイドに属するアントシアニンという成分がつかさどります。アントシアニンを含むのはブルーベリーだけではないんです!花の色を決めるアントシアニンには3種類の基本骨格があります。

ペラルゴニジン  オレンジ-赤
シアニジン       赤
デルフィニジン    紫-青

これらの色素のバランスにより花の色合いが決まります。ただし、上記の色は大まかな傾向に過ぎません。たとえば青いヤグルマギク、青紫色の朝顔はシアニジンにより青色を出すことが知られています。またヒマラヤに咲く青いケシの花も、シアニジンで淡い青色を出しています。こうした色の違いは、フラボノールやフラボンといった無色の要素がアントシアニンと積み重なって青みを増したり、またリンドウのように芳香族アシル基が役割を果たしていたりします。

バラには青色を作る遺伝子がない

パラにはもともとペラルゴニジン(オレンジ)、シアニジン(赤)を作る遺伝子しかなく、デルフィニジン(青)を作る酵素(フラボノール-3'5'-水酸化酵素)を持たないため、交配を繰り返しても青いバラができなかったと考えられます。同様に、青い花をつけないキクやカーネーションもフラボノール-3'5'-水酸化酵素を持ちません。

参考  花の色と対応するフラボノイド
カルコン     黄色のカーネーション、ベニバナ
オーロン     キンギョソウ
ペラルゴニジン バラ、赤ダイコン
シアニジン   バラ、アサガオ(青を含む)、ヤグルマギク
デルフィニジン アジサイ、ツユクサ、スミレ、ハイビスカス


サントリーが作った青いバラ

サントリーは、青い花からデルフィニジンを作るのに必要なフラボノール-3'5'-水酸化酵素を取り出し、遺伝子組み換え技術を用いてバラに導入しました。アグロバクテリウム法という遺伝子導入法を用いていますが、そのノウハウは簡単に習得できるものではありません。(優れた実験センスが必要らしいです。)バラの場合、苗を育てて成功したかどうかを確認するのに半年ぐらいかかるうえ、青い色素を作る遺伝子は花によって細部が異なります。

サントリーは遺伝子導入のために1万本におよぶ実験を繰り返しました。ペチュニア、リンドウ、チョウマメ、ラベンダー由来の遺伝子は導入に失敗しましたが、とうとう三色スミレ由来の遺伝子導入に成功しました。最終的にはパンジーやアイリスの遺伝子もあわせて導入し、デルフィニジンの色素がほぼ100%に達するバラが実現できたのです。

ほとんどデルフィニジンのバラでもリンドウやキキョウのような青色にならない理由は、細胞内のpHや金属イオンの配合など環境によるものと考えられています。遺伝子操作により花の色を変えることがいかに難しいかを物語っています。


青いバラは安全なの?

バラには栽培バラ(Rosa hybrida)と野生バラ(Rosa xxx)があります。園芸バラは4倍体といって、2倍体である野バラよりも遺伝子を倍多く持っています。(ヒトの細胞には常染色体が2セットずつ入っています。精子と卵子だけは1セットずつしか持たず、受精して2セットになります。こういう細胞を2倍体といいます。4倍体は同じ染色体が4セット入っているわけです。)このように、園芸バラは天然のバラと遺伝子構成が違うため、野生のバラと園芸バラは受粉して交配することがありません。サントリーでは、青いバラが野生のバラと交配できないことを、ハチを用いた実験などでも確認しています。

青いバラが園芸種と交配する可能性はあるのですが、園芸バラを種から増やすことは新種の開発以外にまずありません。通常は挿し木や接木で殖やします。よって、青いバラが生態系を崩す危険性は限りなく低いといえます。


青いバラはどこで買えるの?

バラは世界の切花市場の実に27%を占めています。これにキクとカーネーションをあわせると、市場の過半数に達します(キクが20%、カーネーションが6%)。これらのいずれも青い花はつけないので、青いバラの需要が大きなことは容易に想像できます。サントリーは2007年より販売する予定です。

青い花は世界的にも需要が高く、遺伝子改変による青い花は北米やヨーロッパでも販売されています(たとえば青いカーネーション)。青いバラは常春の高地、コロンビアやエクアドルで栽培されています。ここから世界に空輸されるのです。

  1. サントリー 「青いバラ」の開発に成功
  2. 日本園芸協会 植物博物館「青いバラのすべて」
  3. 東京税関 成田空港における切花の輸入

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