第2回 メタボロームシンポジウム開催にあたって
我が国内における第1回メタボロームシンポジウムは、2005年に鶴岡で開催された第1回国際シンポジウムを契機として、国内のメタボローム研究に携わる研究者を中心とした実行委員のもとに、昨年11月、同じ慶応大学鶴岡キャンパスで行われ、約170名の参加者を得た。今年はメタボローム研究の継続的発展を願って、第2回として東京大学医学部で開催を企画した。
今回のサブタイトルは「生理機能の理解と病態解析にむけて」とした。シンポジウムをメタボロームの為の質量分析などのハード面の基盤技術とその解析を中心としたソフト面の基盤技術、そしてその応用として、植物、微生物における生理機能を中心としたものと、人を中心とした動物での、生理・病態解析中心としたものの4つのセクションとして構成した。
メタボローム解析は近年、その成長が著しく、欧米では製薬会社やバイオベンチャーが本格的に取り組みを始めている。特に医療の分野では、薬物動態研究から、薬の副作用を迅速に解析するためにメタボローム解析が重要な手法となってきている。また一部の大手製薬企業やバイオベンチャーでは新薬のターゲットや病態のマーカーを検出する目的で、メタボローム技術による病態解析に力を入れる企業が増えてきた。また食品メーカー等においても、機能性食品やサプリメント等の予防医学的な評価をメタボロームの手法で行うことを始めている。さらに、imaging mass spectrometryや安定同位体を利用したフラックス解析等の新しい手法もすでに一部の企業では、実際に取り入れられている。
メタボロームではLC-MS,GC-MS,CE-MSやNMR等の基盤となる測定技術のみならず、測定データから如何に効率よく定量的なプロファイリングを得、可視化するかというインフォマティクス技術が非常に重要であることは議論の余地がない。また生理機能の理解と病態解析への応用に関しては、メタボローム情報は遺伝子レベルgenotypeと生理、病態レベルでのphenotypeを結ぶ“molecular phenotype”としてmissing linkの解明に重要な役割を担っていると言える。
さらに、今回は、MSデータからの代謝物同定を速やかに行う為の、分子量関連イオン及びフラグメントイオンの質量スペクトルデータベース構築にむけたJST-BIRDの西岡研究班と、脂質メタボロームの基盤技術と病態解析等への応用をターゲットとしたJST-CRESTの田口研究班及との共催で開催することとなった。後者については6日午後に共催セッションとして開催するので、興味のある方は、ぜひ併せてご参加願いたい。
田口 良
東大院・医 実行委員会委員長